http://niwaella.ichi-matsu.net/%E3%82%A2%E3%83%A6/%E7%90%B5%E7%90%B6%E6%B9%96%E7%94%A3%E3%81%A8%E6%B5%B7%E7%B3%BB%E9%81%A1%E4%B8%8A%E3%80%80%E3%81%9D%E3%81%AE%EF%BC%91琵琶湖産と海系遡上 その1
“遡上アユの恩恵受けていながら、
「琵琶湖産サイコー」というのもいかがなものか”
ということを書きました。
この理由は、
琵琶湖産アユの放流は海から遡上するアユを減らす恐れが大きいから。
放流された琵琶湖産アユは再生産に寄与していないということが
以前から指摘されていました(1)
佐賀県松浦川での調査から、琵琶湖産由来の仔魚はいそうだが、
翌年川には戻ってきていないと記されています。
長良川での調査例では、
遡上アユに、遺伝的に琵琶湖産の混ざっている可能性が低いこと(2)
流下仔アユには琵琶湖産の遺伝子が入っていない可能性が高い(3)
が報告されています。
さらに、最近発表された遺伝学的な解析では、
日本のアユが地理的なグループに細分され、
琵琶湖産はまたさらに、遺伝的に異なるグループだとされており(4)(5)
これは、さんざん放流されているにもかかわらず、
地理グループが維持されていることを示しているものであって、
琵琶湖産のアユは当然遺伝子を放流先に残していない
(琵琶湖産以外も、「何とか産」と呼ばれている別地域のアユも)
と考えて良いのではないでしょうか。
(1)東 幹夫. 1980. コアユ-一代限りの侵略者?. 川合禎次・川那部浩哉・水野信彦(編). 日本の淡水生物 侵略と撹乱の生態学. 東海大学出版会. pp. 154-161.
(2)原 徹・斉藤 薫・武藤義範. 1996. アユ資源の増殖に関する研究-I 長良川に天然遡上するアユの種類について. 岐阜県水産試験場研究報告, 41: 1-5.
(3)松田宏典・原 徹・長瀬 崇・桑田知宣 . 2005. 長良川で採集した仔アユ内における陸封型の混合率と交雑個体-II . 岐阜県淡水魚研究所研究報告, 50: 1-6.
(4)武島弘彦・井口恵一朗・橋口康之・西田 睦. 2016. かつてない広域的大規模サンプルのDNA分析でわかったアユの地域差. http://www.chikyu.ac.jp/publicity/news/2016/0606.html. 2017年1月29日閲覧
(5)Takeshima, H., K. Iguchi, Y. Hashiguchi and M. Nishida. 2016. Using dense locality sampling resolves the subtle geneticpopulation structure of the dispersive fish species
Plecoglossus altivelis. Molecular Ecology, 25: 3048–3064.
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